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小さな小さな事。
それが1つ、また1つ。
塵よりも小さな小さなそれが、器に溜まっていくのを感じ始めた時には、もう手遅れだった。




取り残された訳じゃない。

今、こうして自分は笑っている。怒っている。泣いている。
食事をしている。歩いている。眠っている。



けれど、降り積もったそれは、確実に己を変えた。
自分ではない自分へと変えた。
「自分」だと思っていたものから、少しずつズレ始めた。







今まで自分はどう笑っていた?
どう歩いていた?
どうやっていた? 何をしていた?






この手を濡らすものは何だ?
この頬を伝うものは雨なのか?










自分の手を見る。見慣れた腕がそこにある。
なのに、まるで画面の向こうの腕を見ているようだった。

これは誰の腕なのだろう。
見覚えがあるうでだ。
たしかに見たことのあるうでだ。
だれのうでだっただろう。







ああ、自分であって 自分でない ものの   うで 。





これは、もう、自分では    ない  。

**********

では「自分」はどこにいったのだろう。


【BGM:アンインストール(Song by石川智晶)】
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続いたりしないって知ってるけど、続いていくんだって思いたくて隣を歩くやつの手を握った。
驚いたような顔をしたけど、すぐに笑って握り返した。
その手が暖かくて柔らかくて優しくて泣きそうになって誤魔化したくて顔を背けた。


「こうやってずっと生きていけたらいいね」


寂しいのか。
悲しいのか。
それとも全くそうとは思ってないのか。
よくわからない声音で呟かれた言葉はそれでも胸を抉るように響く。
ひくりと喉が動くけれど言葉はでない。
代わりに握っている手の甲を指先でくすぐった。


「くすぐったいね」


それはくすぐった手の甲なのか。
この空気なのか。
それともこれからの人生を思ったからなのか。
何だかよくわからないけれどとりあえず頭を撫でた。


「こうやって生きていくさ、くすぐったいのだってその1つだろ」


俺と
お前と
まだ見ぬ、形を為し始めたばかりの存在と
もしかしたらこれから形を為すかもしれない存在と


「うん、そうだね」


ゆるりとおなかを撫でる手は、とても優しい。
見つめる視線は、とても温かい。
薬指に収まっている銀色の細い金属の輪っかがきらりと光った気がした。


「こうやって、いきたいね」


これからの道を行きたいね。
これからの人生を生きたいね。
こうやって穏やかに逝きたいね。


「……ああ」


柔らかで温かで優しい手を握る俺の手は、きっと硬くて骨ばっててけれど優しい手だと思ってくれているのだろうなんて、少しだけ自惚れてみた。

**********
【BGM:永遠に(Song byアフロマニア)】


まだ見ぬ子どもへ
母親となる君へ
「まーた風邪か」
「うん」
「いい加減飽きるだろ」
「うん。だからお願いがあるんだけど」
「外に連れ出してっていうのはアウト」
「…チッ」


汚く舌打ちするのと同時に、少しだけ咳き込んだそいつを、俺は慌てて布団に寝かしつけた。
眠くないのだといわんばかりにじとりと睨みつけてくるのを、やかましいといわんばかりに睨み返しておく。


「お花見行きたかったのになぁ」
「お前の風邪が治るのを待ってたら葉桜だな」
「だよね…ちぇー」


唇を尖らすそいつの額に、ペチリと濡れタオルを置く。
冷えピタは肌が痒くなる感じがして嫌なのだそうだ。
ついでに濡れタオルを作る過程で冷えた俺の手を、そのままそいつの火照った頬に添えてやると、気持ちよさそうに目を細めた。
お前は猫か?


「お花見ー……」
「……風邪が治ったら新しく出来たショッピングモールに連れてってやるから、そこで存分に花を見ろ」
「……花屋とかいうオチだったらぶん殴る」
「アホ。花をモチーフにした店があるとかでクラスの女子が騒いでたんだよ。多分お前も好きだと思うし、快気祝いに何か安いのなら買ってやる」
「えっ! ほんと?!」


きらきらと目が輝いているのは、風邪で潤んでいるからだろうか。
勢い余って身体を起こしそうになったそいつをやんわり押し止め、ずれてしまった濡れタオルを再び額に乗せてやる。


「嘘じゃねぇからとりあえず寝ろ」
「約束だからね! 嘘吐いたら針千本刺すからね!」
「飲ますんじゃないのかよ」
「飲めない約束はするもんじゃないもん」
「……マジで刺す気かお前は!」


少々強めにタオルの上からおでこを叩く。
タオルがあるから緩衝材にはなっているけれど、それでもそれなりの痛みは与えられたようで、そいつは顔を顰めて不満をもらした。
もちろんそんな不満は耳に入れるつもりはない。


「ほれ、さっさと寝ろ病弱女」
「うん、お休み元気だけ男」
「……」


どうしてこうも一言多いのか。
見た目だけでいけば典型的な病弱少女にも関わらず、だ。
とはいえ、本人にこれをいうと「あんたがいつも近くにいてくれるから、口調が移ったんじゃないの?」とあっけらかんと言われた。
その返事に、実は顔が赤くなったなんてこいつには言えない。



近くにいる、というのと
近くにいてくれる、というのとでは全く意味合いが違うじゃないか。




こうやって些細な事で俺を喜ばせてくれるこいつは、天性のタラシか何かだと思う。
病弱という理由で大半をベッドに縛り付けられているこいつを可哀想とは思うが、元気はつらつだったらさぞや世の中の男が放っておかなかった事だろう。
そう思うと、病弱でよかった、などと勝手な事を思ってしまった。


「ねーねー」
「ん?」
「おやすみー」
「…おやすみ」







『私が「おやすみ」って言ったら、ちゃんと「おはよう」って言ってね?』


『勝手にいなくなっちゃったりなんか、しないでね?』








小さい頃の約束。
「おやすみ」と言ってしまったからには、途中退場は許さない・起きるまでは傍にいろ、というこいつの我侭を、俺は律儀に守り続けている。
見た目は儚げで、言動はどこか乱暴だけれど、根っこがとんでもなく寂しがりやなこいつの目覚めを、俺は何度見てきただろうか。

寝つきが恐ろしく良いこいつは既にスヤスヤ寝息を立てていた。
時計をチラリと見て、統計的に2、3時間は起きないだろうと予測をたてる。
カーテンの開いている外を窓ガラス越しに見れば、遠くにある桜並木がよく見えた。そういえばここは高台だからそりゃよく見えるだろう。
花見に行けない事を悔やむだろう。


「仕方ないな」


そう呟いて、まだ冷たくはあるけれど念のために、と濡れタオルを限界まで冷やしてから、再び額に乗せる。それでも起きない辺り、こいつはどれだけこの感触に、俺の気配に慣れているのだろうか。
それでも起こさないように細心の注意を払い、携帯と財布だけをポケットにねじ込んでからゆっくり立ち上がり、そっと部屋を出た。

階段を降りてから、台所に立つあいつの母親に声をかける。


「おばさん、ちょっと出かけるけどすぐ戻るから」
「あら、そう? どこに行くの?」
「ちょっと花泥棒」
「まあ!」


にかりと笑ってそう言うと、あいつに良く似た…というか、あいつがよく似た母親がクスクス笑って「気をつけてね」と見送ってくれる。
玄関先に置いておいた自分のチャリに跨り、目指すのは桜並木……を、管理している事務所。
頭を下げて、下げて、下げまくったら一枝位桜をくれないだろうか、と思いつつ。

***********


驚く顔と、喜ぶ顔が見たいから。
愛してる、なんて。
映画やドラマではよく見る台詞よく聞く台詞。
その中では素敵な響きで世界を構築しているというのに、不思議だね。



「愛してるよ」
「…………………」


実際に口にすると、目の前の人の顔が盛大に歪んだ。
この上なく、とてつもなく、限りなく、強烈に、心底。
嫌そうな顔をした。


「……何か言ってよ」
「キモチワルイ」
「他に言う事あると思うけど」
「キショクワルイ」
「同じだよ」


溜息を吐いて、それ以上の言葉を引き出すのは諦める。
元々無理だったと言えば無理だった。
そう。そういえば目の前の人物はそういう奴だった。
会話は終わりと言うように視線を逸らしたというのに、目の前の人物は鳥肌を解消したいと言うように両腕をさすりながら胡乱な瞳でたずねて来る。


「いきなり何」
「何が」
「何を理由に、いきなり人に愛を説き始めたの」
「言ってみようかと思っただけだけど?」
「あー、そう」


じゃあもう1つ聞いてもいいかな。


「君の年齢はいくつだ」
「16だね。お互いに」
「だよね。そうだよね」





16のヒヨッコが「愛」を説くなんてばかげてると思わない?






真顔で、それはもうここ最近見た事がない位真剣な顔。
少しだけ眉間に皺が寄っているのは、多分さっきの「愛してる」っていう台詞がよほど嫌だった名残だろう。


「キモチワルイんだよね、この年で愛してるって言われるの。すごく薄っぺらく思える。分不相応っていうか、ただの見栄っ張りというか…とにかく似合わない」
「年齢で恋愛はしない主義じゃないの?」
「それでもその年齢に見合った言い回しって大事だと思わない?」
「まあ、ね」
「とにかく『愛してる』って言われるのは好きじゃない。もうちょっと色んな事を経験したら別かもしれないけどね」
「そう」
「うん」


じゃあ、さ。


「好きだよ」




……って、言ったらなんて答えてくれる?







「知ってるよ」


嬉しそうに、照れくさそうに頷く君から目が離せなかった。

***************


「愛してる」と言える時がきたら、また君は笑って頷いてくれるかな?
このSSと対になっております。






慟哭 悲鳴 絶叫

咆哮にも等しきその声




痛い 辛い 苦しい やめろ ヤメロ

なき叫ぶその声




これほど心地いい声がこの世にあったとは。
ぞくりと身の内を這い上がる戦慄は悦び。
自然と唇が笑みの形に歪んだ。


「あなたはとてもいい声でなきますね」


これ以上ない賛辞。
それを全身から血を流して這いつくばるその人に贈る。
賛辞に対して返るのは、苦しそうな喘ぎ声と射抜くような視線。
憎悪が形となるならば、きっと己の心臓は打ち抜かれていただろう程に強い視線。


「うん。とてもいい」


口端が持ち上がって笑みの形が深くなる。
こんなに笑ったのはいつぶりだろうか。
楽しくて愉しくて仕方がない。

それでも、まだ何かが足りない。
憎む視線も苦しげな吐息も肉体と精神があげる苦痛の絶叫も
確かにこの上ないものだけれど。
まだ足りない。




さて、どうしよう。







「―――――待ちましょうか」


せっかくだ。
せっかく、こんな素晴らしい逸材に出会えたのだ。
もうこの先遭遇できないかもしれない程に、己が理想としたものが目の前にある。
足りないと言うならば育て上げればいい。


「今のままでも確かにいいですが…まだ、足りないようです」


傷が広がるように
傷が一生体に残るように



死なない程度に傷を抉って、新しい血を垂れ流させて
ゾクゾクするような絶叫を聞く。





「あなたが、僕好みのいい声でなけるまで待ちましょう」


言葉1つ紡ぐ度


「光栄に思って下さいね。僕が何かを待つなんて有り得ないのだから」


傷が1つ増える


「あなたならば待ちましょう」


あがる咆哮に憎悪が混じる


「これはその約束の印です」


一生消える事のない傷跡を刻み付ければ、一際鋭い絶叫があがった。
飛び散った血をぺろりと舐めると、この上ない甘さで。
いっそこのままでもいいから貪り食らおうかと思うほどに甘くて。
ごくりと喉が鳴った。


欲望を抑えるのには苦労したけれど我慢しよう。


この甘さがもっと芳醇なる香りを放つまで
なき声が熟するまで

肉の欠片も
血の一滴も
骨すらも

全て喰らい尽くせる事を夢見て待とう。

******************


さあ、早く僕に溺れるがいい。
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(C)紡ぎウタ / ブログ管理者 イチエ
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