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・この日記ではオリジナルのSSや、時折二次創作のSSが書き連ねてあります。苦手な方・興味のない方は見なかった事にしてご退場下さい。
・二次創作物(特定ジャンルなしにつき、その都度要確認)は、出版社・原作者とは一切関係がございません。また、各公式サイトへの同じ窓で移動は厳禁ですのでどうぞご了承下さい。
・この日記に存在する全てのSSはイチエのものであり、転載・複製は禁止です。
・リンク等につきましては、お手数ですが一度メール(ichie_1516@hotmail.com @→@)にてご連絡下さい。
携帯日記。
写メした画像を随時更新。限りなく不定期。 カーソルを記事に合わせると日記の文章が表示されます(クリックすると日記のページに飛べます)。
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2006.09.26 Tue 00:41:50
今日の日付だけは、何があっても忘れる訳がない。
もうずっと前から準備をしていた位なのだから、忘れるはずがない。
同室の静には軽く呆れられるほどの「忠犬」ならば
やっぱり
忠実なる僕としての愛情を示さなくては。
ガサガサと音を立てる紙袋を手に軽くノックをしてからドアを開ければ、そこには1人机に向かってパソコン入力をしている葵さんがいた。
辺りを見回すけれど、人がいる気配もなければ今し方出て行ったという様子もない。
「あやちゃん、どうしたの? 早く入ればいいのに」
くすくす笑って手招くその人の言葉に従い、ばつが悪く思いつつも素直に室内に足を踏み入れて扉を閉めた。
そうすると完全に他者のいる空間と切り離され、俺と葵さんだけの空間が出来上がる。
「夏目先輩は?」
「霞月は先生の所に資料提出に行ったよ。多分戻ってくるのは30分後じゃないかな? 旭ちゃんは今日7限まであるって言ってたし……しずかちゃんは…」
「ああ、弓道部に先に顔を出すとは言ってました」
「だよね」
にこりと笑ってまたパソコン画面に視線を戻してしまう。
少しだけ伏目がちになるその表情も好きだけれど、カタカタとキーボードを操る音を聞くのも実は好きだったりする。
はっきり言えば、この人の作る空間や音の全てが好きだ。
それが恋愛感情なのか、ただの憧れなのかはわからないけれど。
「葵さん」
「んー?」
「今日、誕生日ですよね、葵さんの」
作業中に話しかける事は滅多にしないけれど、今日だけは特別。
上の空のような声で返事を返したその人は、俺の続いて発した言葉に少しだけ驚いたような顔をしたけれど、すぐに嬉しそうな笑顔を浮かべた。
「嬉しいな。覚えててくれたんだね」
「忘れませんよ。去年だって覚えていたでしょう?」
「うん。でもほら、去年は数日前に霞月がその話題を持ち出したから…だから覚えてたのかなって思ってた」
「そこまで俺は薄情に見えますか?」
苦笑してそう尋ねれば、葵さんはパソコンのデータを保存するようにマウスを何度かクリックした後、「あやちゃんは優しいよ」と否定の言葉を告げてくれる。
どこまでも柔らかな笑顔を浮かべるその人との距離を詰めるために歩み寄れば、葵さんは椅子を回転させてパソコンから俺の方へと身体を向けてくれた。
「誕生日、おめでとうございます」
少しだけ緊張するのは、きっとこの人が本当にこのプレゼントを喜んでくれるか不安だから。
こんなのは俺らしくはない、と思うけれど。それでも声が震えなかっただけ誉めてやりたい位だ。
「ありがとう、あやちゃん」
手にしていた紙袋ごと差し出すと、葵さんはまたふわりと微笑んでそれを丁寧に受け取ってくれた。
「開けてもいい?」
「ええ、どうぞ」
そう言いつつも既に紙袋に手を差し込んでいる姿に吹きだしはしなかったものの、どうしても笑みが零れてしまう。
けれど葵さんはそんな俺の様子よりも、プレゼントの中身が気になるらしく、紙袋から取り出した少し大きい箱のリボンを解いていた。
男の割には細くて綺麗な指がリボンの端を摘んで引いていく動作を、やはり緊張しながら見つめる。
リボンという拘束を解かれ、剥き出しになった箱の蓋を開けた途端、葵さんは嬉しそうに声をあげた。
「うわぁ、フォンダンショコラ…! すごい美味しそう!」
甘い物が好きだという葵さんに用意したのは、フォンダンショコラ。
少し小さめのサイズを幾つか作り、潰れないように少し大きめの箱に入れてきたのだが、どうやら潰れる事もなく無事お披露目ができた事にホッとした。
けれど1番ホッとしたのは、嬉しそうな葵さんの顔。
「フォンダンショコラ、好きなんだよね。最近食べてなかったし……今食べてもいい?」
「ええ、もちろん」
やっぱり俺の返事の前に既に箱に手を伸ばして1つ手にとると、葵さんは口を開けてかじりつく。
作ってから大分冷めているから、中のチョコレートがトロトロと出てくる事はないのが少し残念だけれど、外の生地とは違う食感にはなっている。……はずだ。
「ん、美味しい…! これ、マーマレードが入ってる?」
「マーマレードが入っているのと、ビターと、あとオーソドックスなタイプを2つずつ作ってみたんです」
「え? あやちゃんの手作り?」
ショコラを頬張りながら、驚いたように俺を見つめてくる。
モゴモゴと口を動かしながら俺を見上げてくるのは、少し反則だと思う。
小動物みたいで思わず抱き締めたくなる。
その衝動を、この人にだけは発揮される理性を総動員して耐え、こくりと頷いた。
「はい」
「ほんとに?」
「ええ。………そんなに驚く事ですか?」
「だって、あやちゃん料理はしてもお菓子は作らないよね? しずかちゃんが作ったのなら何回か食べた事あるけど……」
「その静に教わって作ったんです。…本当はもうちょっと違うケーキとかも作ってみたかったんですが……」
そう。本当はもう少し凝ったものを作ってみたかった。
そのために1ヶ月も前から静に頼み込んでいたのだから。
けれど静のアドバイスに従い、比較的簡単なものをある程度の種類を揃えて、かつ、完璧に仕上げる事にしたのだ。
「……美味しくなかったですか?」
「ううん! 美味しいってさっきも言ったじゃない。すごく…本当にすごく美味しいよ。すごいね、あやちゃんっておかずとかの料理だけじゃなくて、お菓子もこんなに上手に作れちゃうんだ」
尊敬の眼差しを俺に向けつつ、手の中のフォンダンショコラをぺろりと胃の中に収めてしまう。
手についた粉砂糖を舐める仕草に思わずクラリとするけれど、それも何とか我慢した。
「美味しかったよ。残りは寮で頂くね。レンジで温めたら中のチョコ、ちゃんと溶けるよね」
「はい。あまりかけすぎないでくださいね?」
「わかってるよー?」
くすくす笑いながら、開いた箱を丁寧に戻していく。
踊るように動く指先をぼんやりと見つめていると、あっというまに箱にリボンがかかり、紙袋の中に舞い戻ってしまっていた。
それでもどうやら俺はまだぼんやりしていたようで、目の前に葵さんが手をかざすまで全く気付かなかった。
ああ、不覚…。
「本当にありがとうね、あやちゃん」
「いえ…喜んでもらえましたか?」
「もちろん! 寮に帰るのがすごく楽しみ」
「良かった」
満面の笑顔でそう言ってもらえると、作った甲斐がある。
フォンダンショコラだけじゃなく、甘いケーキが好きな事は知っていたけれど、それでも食べたくない時期だってあるだろう。その時期と被っていたら目も当てられなかった。
……とはいえ、この人が何を考え、どう思っているかがわかった事なんて今まで1度もない。
本当はあまり食べたくない気分だったとしても、俺を落ち込ませないようにきっと美味しそうに食べてくれた事だろう。
「……あーやちゃん?」
「はい?」
「ケーキのお礼、したいんだけど」
「え? でもこれは葵さんの誕生日プレゼントですから。お礼なんていりませんよ」
慌てて首を振る。
そういえばこの人は何かとお礼をしてくる。
嫌な訳じゃないけれど、お礼をもらっていいのだろうか、といつも思う。
今だってそうだ。と、いうより今の場合、本当にもらう必要はないだろう?
「僕がしたいの」
そう言われれば俺が断れない事を、この人は知っているに違いない。
そして本当に俺は断れないのだ。
戸惑いながらも「どんなお礼してくれるんですか?」と問えば、葵さんは少しだけ瞳を細めた。
本当に反則だ。
その表情は、どうしようもなく俺を誘うから。
「今日は、僕のお伺いを立てなくていいから。あやちゃんがしたい事を、僕にして」
緩く首を傾げながら囁くように告げられた言葉に、顔が赤くなりそうだ。
今まで滅多に聞いた事がない「究極のお許し」。
「……本当に?」
「うん」
「でも、それじゃ俺が葵さんにプレゼントした事以上のものがお礼になっちゃいますよ?」
「いいの。あやちゃんがしてくれる事って、僕へのプレゼントにもなるんじゃないかなーって思うんだけど…違う?」
ことり、と反対側に首を傾げて見上げてくる瞳は、相変わらず俺を誘う。
いつもは近寄りがたいほどに高潔なイメージのあるこの人が、こうして誰かを誘う時は途端に雰囲気が変わる。それはもう、性質が悪い位に。
きっと…わかってやっているのだろう。
この人は見た目よりもずっとずっと色んなものを見通している気がするから。
俺の願望も、欲望も、何もかも。
「葵、さん」
「ん?」
「本当にいいですか?」
「うん。いいよ」
にこりと笑いながら、ゆっくりと両腕を持ち上げてきたその人の身体を抱き寄せ、持ち上がった両腕を俺の首に回させる。
久しぶりに間近に感じるこの人の体温に、どうしようもなく身体が熱くなるけれど、今はまだ我慢。
吐息をかんじる位に近くなった顔に俺は瞳を細め、そっと耳元に唇を寄せて囁く。
「お誕生日おめでとうございます、葵さん」
「…ん、ありがと」
笑みを含んだその声を聞き終わるよりも早く、唇を重ねた。
*********************
【BGM:EASY BREEZY(Song by UTADA)】
☆Happy birthday to Hina Sakazaki☆
もうずっと前から準備をしていた位なのだから、忘れるはずがない。
同室の静には軽く呆れられるほどの「忠犬」ならば
やっぱり
忠実なる僕としての愛情を示さなくては。
ガサガサと音を立てる紙袋を手に軽くノックをしてからドアを開ければ、そこには1人机に向かってパソコン入力をしている葵さんがいた。
辺りを見回すけれど、人がいる気配もなければ今し方出て行ったという様子もない。
「あやちゃん、どうしたの? 早く入ればいいのに」
くすくす笑って手招くその人の言葉に従い、ばつが悪く思いつつも素直に室内に足を踏み入れて扉を閉めた。
そうすると完全に他者のいる空間と切り離され、俺と葵さんだけの空間が出来上がる。
「夏目先輩は?」
「霞月は先生の所に資料提出に行ったよ。多分戻ってくるのは30分後じゃないかな? 旭ちゃんは今日7限まであるって言ってたし……しずかちゃんは…」
「ああ、弓道部に先に顔を出すとは言ってました」
「だよね」
にこりと笑ってまたパソコン画面に視線を戻してしまう。
少しだけ伏目がちになるその表情も好きだけれど、カタカタとキーボードを操る音を聞くのも実は好きだったりする。
はっきり言えば、この人の作る空間や音の全てが好きだ。
それが恋愛感情なのか、ただの憧れなのかはわからないけれど。
「葵さん」
「んー?」
「今日、誕生日ですよね、葵さんの」
作業中に話しかける事は滅多にしないけれど、今日だけは特別。
上の空のような声で返事を返したその人は、俺の続いて発した言葉に少しだけ驚いたような顔をしたけれど、すぐに嬉しそうな笑顔を浮かべた。
「嬉しいな。覚えててくれたんだね」
「忘れませんよ。去年だって覚えていたでしょう?」
「うん。でもほら、去年は数日前に霞月がその話題を持ち出したから…だから覚えてたのかなって思ってた」
「そこまで俺は薄情に見えますか?」
苦笑してそう尋ねれば、葵さんはパソコンのデータを保存するようにマウスを何度かクリックした後、「あやちゃんは優しいよ」と否定の言葉を告げてくれる。
どこまでも柔らかな笑顔を浮かべるその人との距離を詰めるために歩み寄れば、葵さんは椅子を回転させてパソコンから俺の方へと身体を向けてくれた。
「誕生日、おめでとうございます」
少しだけ緊張するのは、きっとこの人が本当にこのプレゼントを喜んでくれるか不安だから。
こんなのは俺らしくはない、と思うけれど。それでも声が震えなかっただけ誉めてやりたい位だ。
「ありがとう、あやちゃん」
手にしていた紙袋ごと差し出すと、葵さんはまたふわりと微笑んでそれを丁寧に受け取ってくれた。
「開けてもいい?」
「ええ、どうぞ」
そう言いつつも既に紙袋に手を差し込んでいる姿に吹きだしはしなかったものの、どうしても笑みが零れてしまう。
けれど葵さんはそんな俺の様子よりも、プレゼントの中身が気になるらしく、紙袋から取り出した少し大きい箱のリボンを解いていた。
男の割には細くて綺麗な指がリボンの端を摘んで引いていく動作を、やはり緊張しながら見つめる。
リボンという拘束を解かれ、剥き出しになった箱の蓋を開けた途端、葵さんは嬉しそうに声をあげた。
「うわぁ、フォンダンショコラ…! すごい美味しそう!」
甘い物が好きだという葵さんに用意したのは、フォンダンショコラ。
少し小さめのサイズを幾つか作り、潰れないように少し大きめの箱に入れてきたのだが、どうやら潰れる事もなく無事お披露目ができた事にホッとした。
けれど1番ホッとしたのは、嬉しそうな葵さんの顔。
「フォンダンショコラ、好きなんだよね。最近食べてなかったし……今食べてもいい?」
「ええ、もちろん」
やっぱり俺の返事の前に既に箱に手を伸ばして1つ手にとると、葵さんは口を開けてかじりつく。
作ってから大分冷めているから、中のチョコレートがトロトロと出てくる事はないのが少し残念だけれど、外の生地とは違う食感にはなっている。……はずだ。
「ん、美味しい…! これ、マーマレードが入ってる?」
「マーマレードが入っているのと、ビターと、あとオーソドックスなタイプを2つずつ作ってみたんです」
「え? あやちゃんの手作り?」
ショコラを頬張りながら、驚いたように俺を見つめてくる。
モゴモゴと口を動かしながら俺を見上げてくるのは、少し反則だと思う。
小動物みたいで思わず抱き締めたくなる。
その衝動を、この人にだけは発揮される理性を総動員して耐え、こくりと頷いた。
「はい」
「ほんとに?」
「ええ。………そんなに驚く事ですか?」
「だって、あやちゃん料理はしてもお菓子は作らないよね? しずかちゃんが作ったのなら何回か食べた事あるけど……」
「その静に教わって作ったんです。…本当はもうちょっと違うケーキとかも作ってみたかったんですが……」
そう。本当はもう少し凝ったものを作ってみたかった。
そのために1ヶ月も前から静に頼み込んでいたのだから。
けれど静のアドバイスに従い、比較的簡単なものをある程度の種類を揃えて、かつ、完璧に仕上げる事にしたのだ。
「……美味しくなかったですか?」
「ううん! 美味しいってさっきも言ったじゃない。すごく…本当にすごく美味しいよ。すごいね、あやちゃんっておかずとかの料理だけじゃなくて、お菓子もこんなに上手に作れちゃうんだ」
尊敬の眼差しを俺に向けつつ、手の中のフォンダンショコラをぺろりと胃の中に収めてしまう。
手についた粉砂糖を舐める仕草に思わずクラリとするけれど、それも何とか我慢した。
「美味しかったよ。残りは寮で頂くね。レンジで温めたら中のチョコ、ちゃんと溶けるよね」
「はい。あまりかけすぎないでくださいね?」
「わかってるよー?」
くすくす笑いながら、開いた箱を丁寧に戻していく。
踊るように動く指先をぼんやりと見つめていると、あっというまに箱にリボンがかかり、紙袋の中に舞い戻ってしまっていた。
それでもどうやら俺はまだぼんやりしていたようで、目の前に葵さんが手をかざすまで全く気付かなかった。
ああ、不覚…。
「本当にありがとうね、あやちゃん」
「いえ…喜んでもらえましたか?」
「もちろん! 寮に帰るのがすごく楽しみ」
「良かった」
満面の笑顔でそう言ってもらえると、作った甲斐がある。
フォンダンショコラだけじゃなく、甘いケーキが好きな事は知っていたけれど、それでも食べたくない時期だってあるだろう。その時期と被っていたら目も当てられなかった。
……とはいえ、この人が何を考え、どう思っているかがわかった事なんて今まで1度もない。
本当はあまり食べたくない気分だったとしても、俺を落ち込ませないようにきっと美味しそうに食べてくれた事だろう。
「……あーやちゃん?」
「はい?」
「ケーキのお礼、したいんだけど」
「え? でもこれは葵さんの誕生日プレゼントですから。お礼なんていりませんよ」
慌てて首を振る。
そういえばこの人は何かとお礼をしてくる。
嫌な訳じゃないけれど、お礼をもらっていいのだろうか、といつも思う。
今だってそうだ。と、いうより今の場合、本当にもらう必要はないだろう?
「僕がしたいの」
そう言われれば俺が断れない事を、この人は知っているに違いない。
そして本当に俺は断れないのだ。
戸惑いながらも「どんなお礼してくれるんですか?」と問えば、葵さんは少しだけ瞳を細めた。
本当に反則だ。
その表情は、どうしようもなく俺を誘うから。
「今日は、僕のお伺いを立てなくていいから。あやちゃんがしたい事を、僕にして」
緩く首を傾げながら囁くように告げられた言葉に、顔が赤くなりそうだ。
今まで滅多に聞いた事がない「究極のお許し」。
「……本当に?」
「うん」
「でも、それじゃ俺が葵さんにプレゼントした事以上のものがお礼になっちゃいますよ?」
「いいの。あやちゃんがしてくれる事って、僕へのプレゼントにもなるんじゃないかなーって思うんだけど…違う?」
ことり、と反対側に首を傾げて見上げてくる瞳は、相変わらず俺を誘う。
いつもは近寄りがたいほどに高潔なイメージのあるこの人が、こうして誰かを誘う時は途端に雰囲気が変わる。それはもう、性質が悪い位に。
きっと…わかってやっているのだろう。
この人は見た目よりもずっとずっと色んなものを見通している気がするから。
俺の願望も、欲望も、何もかも。
「葵、さん」
「ん?」
「本当にいいですか?」
「うん。いいよ」
にこりと笑いながら、ゆっくりと両腕を持ち上げてきたその人の身体を抱き寄せ、持ち上がった両腕を俺の首に回させる。
久しぶりに間近に感じるこの人の体温に、どうしようもなく身体が熱くなるけれど、今はまだ我慢。
吐息をかんじる位に近くなった顔に俺は瞳を細め、そっと耳元に唇を寄せて囁く。
「お誕生日おめでとうございます、葵さん」
「…ん、ありがと」
笑みを含んだその声を聞き終わるよりも早く、唇を重ねた。
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