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誰もが天使は清く、悪魔は穢れていると言う。
特に天使は「白」く、悪魔は「黒」だなどと戯言を言う。
そんな事はない。
実際は天使であっても黒い翼を持ち、悪魔であっても白い翼を持つ者だっている。
だからこそ、リーアは色で区別をしようとする人間を心の中で嘲っていた。

リーアの翼の色は天使の属性にありながらも黒い。
しかし周囲はその事について何ら揶揄する言葉をかけない。
なぜなら、リーアの背中の翼は4枚の翼がついている。
翼の枚数が多ければ多いほど力が強いのは、誰もが知っている世の理。
それにのっとれば、大概の天使はリーアの力を恐れて何も言わずにただ媚びへつらった。
それを見るたび、リーアはにこりと笑みを浮かべて聞き流す。
心の中であれこれと皮肉の言葉を並べ立てながら。


白ければ清い。黒ければ穢れ。
なんとも滑稽な線引き。
白い者が黒くないなどと、誰にわかるというのか。
黒い者が白くないなどと、どうしてわかるのか。

どうして白こそが天使だというなら、万能なる神は、我らが父は――――――。








「……ほんと、ふざけんじゃないわよ」
「厳しいな、リーアは」
「ルゥ!」


当てもなくぶらぶらと美しく手入れのされている庭園を歩いていたリーアに、背後から声がかかる。
耳によくなじみ、誰よりも愛しいその声にリーアは満面の笑みを浮かべて振り返った。
そこにいたのは想像していた通りの人。
リーアとは違って真っ白い翼を、それも6枚背中から優雅に広げているルゥ。
けれど艶やかな髪も、優しげな双眸も、リーアの翼と同じ漆黒の色をしていて、それに触れるのも見つめられるのもリーアは好きだった。


「また何か言われたのか?」
「顔を合わせる度に。うるさいったらないわ。私の翼の色と枚数がよほど気に入らないのね」
「はは……。仕方ないさ。実際天使長の座についた者で、黒い翼だった者はいないのだから」
「だったら白い翼の中から選べばいいのよ」
「それもできないってわかってるだろう? 賢い私のリーア」


そっと腕の中に包まれ、囁くように言われる。
たったそれだけで苛々していた気持ちが治まった気がした。
広い胸に頬を摺り寄せ、リーアは甘えるように上目使いでルゥを見上げる。


「わかってる。今白い翼で4枚以上持ってる人間は既に天使長の座についてて、私しか空座を埋める4枚羽根はいないんですもの。……だったら今更アレコレと言ってくるのは筋違いよ」
「そう言ってやらないでくれ。彼らも必死なんだよ。近頃…あまりいい空気が漂っていないから」
「う、ん……」


苦笑交じりにルゥに言われると、それだけでリーアは大人しくなった。
そしてルゥの言葉に眉を寄せる。


実際、今天使たちの住まう天界はあまりいい状態ではない。
万能なる我らが父の力が弱まるこの時期を察知し、魔界がじわりじわりと攻勢を仕掛けているのだ。
他の天使長は全てその守護や警備にあたっていて、天界の中心地である城に残っているのは、大天使長であるルゥと、その補佐に選ばれているリーアだけだった。
皆が噂する。


父は我らを見捨てるのか


       バカな事を言うな!


しかし現に父は我らの危機を見過ごしておられる!    


       そういう事を軽軽しく言うものではない!


ならば何故我らが父は何も言ってくださらぬのか!


       えぇい黙れ! そう言う戯言こそが我らの結束を乱すのだ!










くだらない、とリーアはいつも鼻でせせら笑うやりとり。
我らが父を信じる者と、信じたいと思いながらも疑惑を覚える者。

我ら天使にとって、「信じる」という行為は何よりも大切になる。
「神を信じる」からこそ、存在を許されていると言っても過言ではない。
「神を信じる行為をやめる」「神を裏切る行為」―――――それはすなわち『堕天』となるのだ。   
だからこそ常に天使は万能なる父を崇め、恐れ、信じる。
そうする事で己を律し、存在し続ける。


けれど…。






「どうした、リーア?」
「ルゥ…」
「いいよ。何でも言ってごらん?」


言うべきかどうか迷うリーアの心のうちを汲み取り、優しい笑みを浮かべてリーアの柔らかなウェーブがかった亜麻色の髪を梳く。
腰まで届くほどの長い髪は無造作に背中に流しているから、風が吹くたびにゆらゆらと揺れる度にルゥが「リーアの髪は綺麗だね」と誉めてくれるから、リーアも己の髪が好きだった。


「私は……父が何をお考えなのかわからない」
「……そう」
「今の状況が父のせいだとは思わないし、そうではないってわかってる。でも…父の影響力がなくなったのは事実で、そのせいで口さがない者が増えてるのも事実」
「そうだね」
「それに……」
「それに?」
「……どうして、どうして父は…白い者を好むというのに、天使に黒い羽根という存在を生み出されたのかわからない。今、黒い羽根の天使が増えてるのは、父の影響力が薄れたせいなの?」


リーアの言葉に、ルゥは悲しげな表情を浮かべた。
大天使長たる彼は、いわば「神」に最も近い存在なのだから、今のリーアの言葉は辛かったかもしれない……そう思い至ってリーアは謝罪の言葉を紡ごうとするが、それよりも早くルゥが口を開いた。


「リーアは…白ければ清く、黒ければ穢れていると思うのかい?」
「いいえ」
「そう言うと思った」


くすりと笑みを浮かべ、額に口付けを1つ落としてくれる。
より一層身体を密着させるように抱きしめられ、リーアはほんのりと頬を染めつつもルゥの首に腕を回した。


「もし黒が穢れだというなら、リーアは穢れている事になるからね。でもそんな事はないっていうのは、私が一番よくわかってる」
「ん…ありがとうルゥ」
「それに」


ルゥが密やかに何かを呟こうとした瞬間、強い風が吹き抜けた。
まるで意図的に、それこそ「神」が吹かせたのではないかと思うほどに強い風の音は、ルゥの言の葉を完全に浚っていった。


「何? 今何て言ったのルゥ。こんなに近くにいたのに……」


全然聞こえなかった、と続けようとした言葉だが、胸に埋めていた顔をあげてルゥの顔を覗き込む事で見えたルゥの顔が、思いの外険しかった事に驚いて思わず飲み込んでしまう。
けれどリーアの視線に気づいたルゥはすぐにいつもの柔らかな笑みを浮かべて「大したことじゃないから、気にしなくていいよ」と額に、頬に口付けを落とす。
それを嬉しく思いながら受け止める反面、ルゥの聞けなかった言葉が胸に小さな棘を残した。









その棘は

1つの予兆

この後に起こる惨劇の

前触れに過ぎなかった。

















ある日ルゥは天界の中心である城を攻撃した。
全ての天使長が天界の隅にて警備にあたっている隙をついての出来事。
6枚羽根を有するルゥのその暴走を止めることができる者はおらず、敢えて言うならば補佐をしていたリーア位しかいない。


城の中心部にある聖堂で2人は逢い見える。
ルゥの真っ白い翼はたくさんの返り血を浴びて真紅に染まっている。
リーアはそれすらも美しいと、思わず見惚れた。
そんなリーアに、ルゥは相変わらず優しい笑みを浮かべて声をかける。


「やぁ。私をとめにくるのはリーアしかいないと思っていた」
「そうね。他に天使長クラスの者はいないから。戻るにしても3日はかかるでしょうね」
「そうだね。だからこそ、今日という日を選んだのだけれど」


にこりと笑って緩く首を傾げるルゥ。
リーアはいつもと変わらない笑みを浮かべているルゥを見つめながら同じように首を傾げた。


「どうして、こんな事を?」
「わからないんだ、私も」
「え?」
「ただ、衝動のままに。何かに突き動かされたんだ。自分の奥底に潜む何かが『壊せ』『奪え』と。今までずっと殺してきた思いだったけれど…もう限界だったようだ」


苦笑を浮かべるルゥの整った顔には、所々赤い血が付着している。
それを気にもせず、ルゥは淡々と語った。


「リーア、以前聞いたね。白は清く、黒は穢れなのか、と」
「えぇ」
「私も、白であれば清く、黒であれば穢れだとは思わない。……私は白の翼を持ち、天使を束ねる立場にありながら、こんなに黒く穢れた破壊衝動を身の内に隠し続けていたのだから」


瞳を細めて笑うその顔は、温和な彼とは違う一面を引き出している。
それはゾクリとするような恐怖心を呼び起こすというのに、何故か美しくもあった。


「白は何にも染まらない色というけれど、それは違う。白は何色にも染まる弱い色だ。だからこそ周囲の言葉に揺らされる。私は、私のこの白い羽根が憎かったよ。白いのに6枚もある羽根を生み出させた神がずっと憎かった」


美しい笑顔で、酷く冷たい言葉。


「リーアのその漆黒の翼が羨ましかったよ。黒はその色以外に染まらない強さがある。そしてリーアはその強さを持っている。美しく強いリーアが、私は何よりも好きだった。そう…神よりも」


何人もの血を浴び、命を奪ったその手をすい、とリーアに差し出す。


「おいで、私のリーア。私と共に来るんだ」


バサリ、と真紅の6枚の羽根が広がるのを、リーアはどこか呆然とした面持ちでずっと見ていた。
自分に差し出された手は相変わらず美しくて、ふらりと近寄り、その手を取った。


「リーア…私のリーア……。もう、私以外見る事は許さない。リーアは私だけを見ていたらいい。他に何も映す必要はない」
「うん」
「いい子だ。私のリーア……リヴァイアサン」
「ルシフェル…」









広がった真紅の6枚の羽根は、リーアを抱きしめたまま空へと舞い上がるために動く。
漆黒の瞳は昏い光を灯し、愛しげにリーアを見つめる。
リーアもまた、恍惚とした表情でルゥを見つめてすがるように首に腕を回した。

そして2人は破壊し尽くす。
天界の中心を、これ以上ないという程に。








2人は堕ちた。

深く、暗い魔界へと。











そして2人は魔界を統べる存在となった。

ルシフェルは魔の全てを統べる王に。

リヴァイアサンは魔の軍団の1つを司る将に。







行き着く先は、果たして――――――。

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【BGM:主よ人の望みよ喜びよ(バッハ)】
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