『憧憬』

空に手を伸ばした。
目一杯伸ばした。
でも届かなかった。

雲の一欠けら位、掴ませてくれたっていいだろう。
その青い空に、綿のようにいくつも浮かぶそれを、一欠けら位。



我侭だ。
駄々だ。
馬鹿げた夢だ。



けれど今日もまた空に手を伸ばす。
眩しさに瞳を閉じても、また伸ばす。
届かないその場所に向かって、己の腕を。
雲のように空に溶け込む事が一生できない腕を。



悔しいなんて思うのは傲慢だ。
悲しいなんて思うのは愚かだ。






それでも止まらなかった。
零れる涙を止める術を、知らなかった。

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焦がれるその場所。

色んな物に憧憬を抱き、色んな物に妬みを抱いて生きています。
妬みも憧れも紙一重だなと思ったのです。
憧れといえばとても綺麗な物に思えるのに、妬みというと汚い物に思える。
いつ、どんな弾みでそれが転じるかなんて誰もわからない。

妬まずに生きて行く事は不可能で、妬む事で次のステップになっている事もある。決して汚いだけの感情ではない。
それでも「妬ましい」と口にするのは、とても勇気のいる事だと思います。